特集月:2009年1月
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ぎふ家づくりの本web
使いやすい家具は人によって千差万別。だからこそ こだわりの家具を作りたい。/浜田工房 浜田由一さん


[写真1]座椅子 [写真2]アトリエの看板

 滋賀県米原市。伊吹山の麓にある自宅では浜田氏の手作り家具を見ることができ、いわばモデルハウス兼用になっています。オリジナルキッチンはカウンタートップには硬度のあるフィンランドバーチを採用。それ以外の立面部分は塗装したシナベニヤを採用し、やわらかみのある雰囲気に仕上げています。サイドボードもやわらかみのあるシナベニヤで統一されています。
 こだわったのは取っ手。取り付けられたコの字型の取っ手は上から指を引っ掛けても、下から指を差し込んでも引き出すことができます。「引き出し1つでも、上から引っ掛けて引き出す人と、下からつかんで引き出す人がいます。既製品の場合は、どうしても使う側が家具に合わせる必要が出てきますよね」とのこと。

写真1 座椅子
「座布団に座ると足が痛くて正座ができない。かといって、よくある座椅子では腰が痛くなる」という要望に応じて制作。あぐらをかくこともでき、炬燵に足を投げ出すこともでき、ある意味、中途半端な座りやすさがラクな姿勢を維持し続けてくれます。

写真2
豊かな自然に囲まれたアトリエは、温かい雰囲気の看板が出迎えてくれます。
オリジナルならではの魅力
 シンクの下には、少し大きめの取っ手。「シンクの下には手拭きタオルをかける場所が必要になります。実際は取っ手用の金具ではない、大き目の金具を取り付けることで、取っ手と布巾掛けを兼用しています」。背が低めの奥様に合わせて、キッチンカウンターの高さも使いやすい位置に決めています。「既製品でも、背の高さに合わせて、ある程度の選択の幅はありますが、ベストの位置を決めることができるのは、やはりオリジナルならではの魅力ですね」。キッチン1つとっても、使う人の立場に立って、細やかなデザインがなされていきます。
 浜田さんの仕事でのこだわりの1つが塗装です。キッチンもサイドボードもドイツ製天然塗料オスモによる仕上げですが、「オスモで、よくこれだけキレイに塗ることができますね」と声をかけられると言います。「私たちも納期はありますが、既成で大量発注の仕事になると、きちんとした工程を踏むことなく仕上げてしまうことが多々あると思うんです。簡単に言えば、拭き取りの度合いが違うということでしょう。とことんまで拭き取らないといけないのに、完全に乾くまで待てないわけです。下塗りが乾かないうちに上から塗ってしまうので、最終的な仕上がりに大きな差が出るということです。日本人はせっかちでもあるし、納期に追われるケースも多いです。もともとドイツ人はあまりせっかちな考え方ではないです。オスモというドイツ製のオイルは、そもそも時間をかけて塗ることで、美しい仕上がりが得られるように開発されているわけです」。
 取っ手の位置、形、シンクの高さなど、納品するときにお客に講釈することはありません。しかし、使う人に合わせた緻密なデザインが行き届いているからこそ、使う人すべてにとって心地良い。そこから人づてにファンが拡大していきます。結局のところ、作り上げられた物によって、すべては表現されているとでも言うべきでしょうか。決して手を抜かず、手間を惜しまない。塗装ひとつに対するこだわりの姿勢からも、職人たる仕事人としてのプライドを垣間見ることができます。
[写真3]サイドボード
[写真4]キッチン


写真3 サイドボード
シナベニヤ、オスモ塗り仕上げ。キッチンと合わせて部屋の雰囲気にマッチするよう、木目による表現は避け、柔らかな印象に。

写真4 キッチン
カウンタートップはフィンランドバーチ。
それ以外はシナベニヤ。オスモ塗り仕上げ。

[写真5]キャビネット
[写真6]ミニチュア家具
[写真7]カンナ


写真5 キャビネット
電話台として機能。素材はシカモア、一部ウォールナット。

写真6 ミニチュア家具
寸分狂わない1/5のサイズで仕上げられたミニチュア家具の世界には、ただ驚嘆。ディテールや質感も完璧な仕上がりで、デンマークの家具デザイナー、ハンス・ウェグナーのお墨付きも得ています。過去には関西の百貨店をはじめ、各地で企画展、個展を多数開催。浜田工房ギャラリーで見学することができます。

写真7
使いこまれたカンナ。きちんと手入れされ、ひとつひとつにこだわる丁寧な仕事ぶりが伺えます。

浜田工房
滋賀県米原市大清水1143
TEL.0749(58)0902
e-mail snedker@nyc.odn.ne.jp
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